聴かせて、天辺の青

おばちゃんの家に帰ったら、既に和田さんたちの車が停まっている。
あれから私たちは何回か信号に捕まったから、和田さん達よりもかなり遅くなってしまった。



とうに家の中に入ってるのかと思っていたのに、車の傍には和田さんたちの姿。
早く入ればいいのに、外で私たちの帰りを待っていてくれたのだろうか。



それにしては様子が違う気がする。少しも私たちの方を見ないで、違う方向を見てる。



「何かあったのかなあ……」



車を停めながら声に出したら、和田さんが振り向いた。車内だから声が届くはずないのに。



ところが和田さんは私たちを一瞥しただけで、すぐに目を逸らしてしまう。



よく見てみると和田さん達の他にも誰か居るらしい。ちょうど車の陰になって見えないけれど、誰かと話している様子がわかった。
仕事関係の人が来てるのだろうか。



車を停めた私たちは、三人の邪魔にならないように車の反対側へと回り込んで玄関へと向かう。気配を消して、できるだけ足音を立てないように、そっと歩く。



玄関の扉へと手を伸ばした瞬間、和田さんたちとは違う声に呼び止められた。

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