聴かせて、天辺の青

「ありがと、とりあえず上がってよ」



家には誰にも居ないけど、そんなことを今さら気にするような間柄じゃない。少なくとも海斗は、友達のひとりだと両親も知っているから気にすることはない。



「じゃ、お邪魔しまぁす」



空っぽの家の中にわざと声を響かせながら、海斗がリビングへと入っていく。



後に続く海棠さんは、ちょっと遠慮がち。目が合うと恥ずかしそうに頭を下げて、よそよそしい態度。
見る限りでは、彼は海斗に無理矢理連れて来られたという感じ。



恐る恐るリビングへと入る彼の背中を見送っていたら、ちょっとだけ寂しくなってくる。



やっと彼と近づくことができたと思えてたのに、また距離が離れてしまったようで。



彼はまるで借りてきた猫みたいに、リビングのソファにちょこんと座っている。どっかりと体を沈めて、我が家のように寛いでしまっている海斗とは全然違う。
海斗の隣りにいると、彼がいっそう小さく見えてしまうほど。



冷えたお茶を飲み干す二人の横で、私はケーキ屋さんの紙袋に手を伸ばす。わくわくしながら紙袋の底に横たわる大きな箱を取り出した。


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