聴かせて、天辺の青
私はどうすればいいのだろう。
砂浜の上で、海棠さんの膝に乗せられて。腰に回された腕がかっちりと私を固定していて、容易く退くことを許さない。
ざわざわと騒ぐ胸の奥から、羞恥心が顔を覗かせ始める。
「重くない?」
「全然、ちょうどいい感じ」
と言って、海棠さんは私の体に顔を埋めた。
そんなにくっついたら、私の鼓動が尋常じゃないほど高鳴っているのがバレバレ。
だけど密着した感触が気持ちよくて、離してほしくない。
もう周りの目なんて気にしないから。
「瑞香、聞いてくれる? 俺さ……、ちゃんと話さなきゃいけないことがあるんだ」
顔を伏せたまま、海棠さんが静かに口を開いた。
高鳴る鼓動の波の中に投げ込まれた小さなひと欠片が、重さを増しながら胸の奥へとゆっくりと沈んでいく。早く見えなくなってしまえばいいのに、欠片は僅かな光を放って存在をアピールしてる。
もう察しはついている。
だけど、私には覚悟を決める時間がない。
「今、話さなきゃいけないこと?」
やんわりと拒絶したつもり。今は聞きたくないから、ただこうして居られるだけでいいから、言わないで。
「うん、今聞いてほしいんだ、話してもいい?」
「わかった、聞かせて」
海棠さんが顔を上げた。
穏やかな彼の目には確かな覚悟が滲んでいる。彼が今を望むのなら、私も受け入れなければと感じさせられた。