聴かせて、天辺の青

帰宅した私たちの変化をすぐ様感じ取ったのか、おばちゃんは優しい笑顔で迎えてくれた。
今朝出かける時よりも、さらにまろやかさを増していると思うのは気のせいではないはず。
変わったのはおばちゃんではないとわかっていても、そんな風に受け止められる。



すべてが私たちを喜んで迎え入れてくれているように思えてしまう。
なんて都合がいいんだろう。



間もなく帰ってきた和田さんたちも、おばちゃんに負けてないほどの笑顔。そして、からかうのも忘れない。



「なんや、もう帰って来てたんか? 今日はお泊まりしてくるんかと思ってたわ」

「瑞香ちゃんのご飯も食べてもたろーと思っとったのに、当てが外れたわ」



和田さんと本郷さんの後に、有田さんが続く。



「楽しんできたんやろ? まだ遊び足りなさそうな顔しとーやん」



語気は強いけど和田さんたちは常に笑顔を絶やさない。私たちを見る目は優しくて温かくて。
だけど、つい意地悪なことを言いたくなってしまう。もちろん本気で意地悪するつもりなんてない。私たちにとっては挨拶代わりみたいなもの。



「一応お土産買ってきたんだけど……、うん、いらなさそうだね」

「は? ワシらにも買ってきてくれたんか?」

「うん、おばちゃんにもね、大した物じゃないけど」



買ってきたお土産をそれぞれ渡すと、和田さんたちは目をくるくるさせる。





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