聴かせて、天辺の青

「警察? あの人、何かしたの?」



真っ先に思い浮かんだのは万引きだったけれど、すぐに海斗が否定する。



「いや、何にもしてないけど、何かあってからじゃ遅いだろ? ストーカーかもしれないし……な」




海斗の声は語尾になるほど強さを増して、私へと視線を落とした。思ったよりも険しい表情で、私に言い聞かせるように。それは忠告というより警告だとわかるほど。
もしも彼女がストーカーだとしたら、狙われているのは海棠さんしか思い当たらない。



固く口を結んだまま、海斗が頷く。



『最悪の場合を考えろ』と、私に言い聞かせるように。



「だったら……、彼女に直接聞いてみたらいいのに、何が目的なのか」



とっさに言ってしまったけど、自分でもよくわからないことを口に出してしまったと思う。彼女に何を聞くというのか、『ストーカーですか?』なんて聞けるはずもないのに。



「は? そんなこと聞けるわけないだろ? 『ストーカーしてます』なんて素直に認めるわけないし」



海斗は呆れたと言わんばかりの声で、まるで私の心を見透かしたような答え。安堵とともに少しだけ緊張が解れそうになる。
だけど、まだ胸は重苦しいまま。



「違うよ、車を停めてる理由……」



言いかけた言葉をのみ込んだ。
車のドアが開いて、女性が降りてくる。




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