聴かせて、天辺の青
ぱきっと音がして振り向くと、背中を丸めた海斗が膝の上で缶を握り締めている。両手で押し潰されて凹んだ缶に見向きもしないで、視線は真っ直ぐ海原へと注いで。視線の力強さと固く噤んだ口元は、一見すると怒っているのかと思うほどの威圧感。
海斗の横顔はこれ以上の問い掛けを拒んでいるように思えて、私も口を噤んだ。海斗の不安を払拭できないことが悔やまれるけれど。
海原を見つめる海斗を邪魔するように、さわさわと風が駆け抜けていく。
「俺が守るから、絶対に何があっても」
大きな溜め息とともに苛立ちを吐き出した海斗の口から、零れ出たのは意外にも穏やかな声。
だけど、私の胸をも響かせる力を持っていた。湧き出る不安を取り払ってしまえるほどの力強い言葉は、決して私へと向けられたものではないとわかっているのに。ここにはいない河村さんへと向けられた言葉だというのに、私の胸へと安心感を呼び込んだ。
「守ってよ、きっと」
そう答えたのは、私の胸から不安を消し去ってくれたお礼を込めて。私自身に対する期待などではなく、海斗の河村さんへの思いに対して。
海斗にはきっと、必ず河村さんを守ってほしい。そして海斗にも、河村さんにも幸せになってほしいから。