聴かせて、天辺の青
「ただし、くれぐれも気をつけてね。赤の他人だよ、和田さんたちみたいによく知ってる人じゃないんだから。怪しかったらすぐに通報するからね」
釘を刺してるのに、おばちゃんは緩んだ表情で軽く頷くばかり。まるで真剣味がなさそう。
「わかってるよ、瑞香ちゃんに迷惑はかけないから」
「違う、そうじゃなくて、おばちゃんと二人きりになる時が危ないって言ってるの、本当に気をつけてよ」
今度は私がおばちゃんの手を握り返して、しつこいぐらいに注意する。終始頷いていたおばちゃんは、
「瑞香ちゃん、ありがとうね」
と、笑顔で締めくくってしまった。
再び夕食の準備を始めようとしたおばちゃんが、あっと声を上げた。二階へ上がろうとしていた私を呼び止めるように。
「どうしたの?」
「二階の掃除は私がしたからいいよ、それでね……」
おばちゃんが手招きするから、内緒話か聞かれてはまずい話かと思った。呼ばれるまま、おばちゃんに顔を寄せて耳を澄ます。
「二階の掃除は、明日から彼にお願いしようと思うの。今日ね、私が掃除してたら手伝わせてほしいって言ってくれたんだけど、病み上がりなのに任せられないじゃない」
困ったような嬉しそうな、おばちゃんは照れたような顔をする。