聴かせて、天辺の青
と思ったら、私との間に買い物袋をどさっと置いて再び立ち上がった。
ポケットに手を突っ込んで、すたすたと歩いて行った先は自販機。
ゴトンという音が二回して、戻ってきた彼の手には缶コーヒーが二本収まってる。そのうちの一本を、ひょいと私に差し出した。
「はい」
相変わらずの抑揚のない声。
見上げたら彼の視線は私ではなく、ベンチの後ろのガラス越しの店内へ。
「ありがとう、お金……」
慌ててバッグの中に手を突っ込んで財布を探していると、
「いらない」
と言って、彼はコーヒーの缶を私の手の上に転がして隣に腰を下ろした。
「ありがとう、いただきます」
「うん」
コーヒーの香りがぷんと漂う。
駐車場に停まった数台の車を眺めながら、暫しの沈黙。コーヒーを啜りながら、何か話さなきゃいけないのかなあ……と思っていると彼が口を開いた。
「さっきはごめん……」
語尾が掠れかけていたけど、確かに彼は謝った。俯き加減の視線は、手の中の缶コーヒーへ向けられている。
「いいよ、気にしてないから」
さっきとは、英司のことだろう。
もう、とうに忘れかけてたのに。