聴かせて、天辺の青



その後、彼が服を買いたいと言うから隣町の衣料品店へ。


どんな服を買うのかと聞いたら、スウェットみたいな普段着とか下着とか……と答えるから、何でも揃う店といえばここしかないと思って連れてきた。
一応、全国展開する衣料品チェーン店で知名度はある。


彼自身行ったことはないらしいが、名前ぐらいは知ってたようで


「へえー、ここが……すっごい安い」


と大袈裟なほど感動する。
彼の感情の起伏を初めて見て驚いたけど、すぐに素に戻っていた。


彼が買い物している間、私は入り口の傍のベンチで待ちぼうけ。


服を買うということは、ここに長居するつもりなのだろうか。東京には帰らないなら、どうして実家に帰らないのだろう。と考えを巡らせる。


やがて彼が、大きな袋を提げて出てきた。その大きさに驚く私が尋ねる前に彼が言った。


「いつまでもエイジの服を借りていられないし、サイズ大きくて落ち着かないから」


確かに、今着ているスウェットもぶかぶかだ。言うならば、小学一年生が入学間も無く体操服を着た感じに似ている。


いつまで居るつもりなの?


言い出しそうになるのを必死に耐えていたら、彼が隣に腰を下ろした。



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