ベストマリアージュ
「珠美?」


さとしが私の背後にいるのがわかる。


顔が、上げられない。


どうしよう、気づかれちゃったら……


私がさとしを失いたくないほど好きだって気づかれたら……


重いって、うざいって、思われるかもしれない。


「お前……泣いてんの?」


しゃがんで私の肩を抱きながら、さとしが顔を覗きこんでくる。


「どうした?優也なら男だっつったろ?」


違う、そうじゃない。


今回はそうだったけど、また同じようなことがあったら、それが女性だったら、私は耐えられないかもしれない。


さとしの空いてる方の手が伸びてきて、私の頬を引き寄せる。


細くて長い指が私の頬と顎に触れて、親指が涙を拭った。


「お前、今日はずいぶん泣き虫だな?」


ふ……と笑いながら、今度はその指が髪をすくう。


髪、そろそろ切らないとな?なんて優しく微笑みながら……


こんな顔もするんだ。


私の髪を見ているさとしの顔をそっと盗み見た。


油断してるときの顔は、少しだけ幼かった頃のさとしと面影が重なる。


ふと髪から目を離したさとし目が、私の目を捕らえた。


慌てて、ふい……と目を逸らして、自分の膝に視線を落とす。


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