ベストマリアージュ
「お前さ……俺のこと、好きなの?」


ふいに耳元で囁かれたさとしの言葉。


「……は?」


瞬時に目を見開いてさとしの顔を凝視した。


なに……それ?改まって言わないでよ!


好きじゃなきゃ付き合わないし、こんなとこまで来ないっつーの!


そう思って見たさとしの顔は、きっとバカにしてると思ったのに、そうじゃなかった。


いつものひねくれた意地悪な顔じゃなくて、優しくて柔らかい眼差し。


また顔が熱くなる。


こんなさとしは初めてかもしれない。


いつもこういう雰囲気になると、ふざけてはぐらかしてたから……


「な、なによ」


苦し紛れにそう言えば、さとしはいつもの意地悪な顔に戻って、スッと立ち上がった。


彼の手の温もりが一瞬にして消えて、自分の体を冷たい空気が通りすぎたように感じる。


さとしはさっきまでいた場所に腰かけて、ソファーにもたれかかった。


「お前、やっぱ帰れ」


「え?」


「来んなっつったろ?

男の一人暮らしの部屋に軽々しく来んなよ」


そう言葉では言ってるけど、私の目を見ようとしない。


やっぱり疚しいことがあるの?


「なんでそんなに来てほしくないわけ?

なんかまずいことでもあるの?」


< 169 / 307 >

この作品をシェア

pagetop