ベストマリアージュ
「じゃあね?バイバイ」


惨めで泣きそうになる顔を見られないように、私はさとしに背を向けてそう言った。


「送るよ」


そう言って背後で立ち上がる気配がしたのを、私は後ろを見ないまま、それを手で制した。


「大丈夫!下でタクシー拾うから

ごめんね?休みなのに押し掛けちゃって……

ゆっくりしてね?」


なんとかそれだけを明るく言って、私は足早にリビングを出た。


追いかけてくるのを拒否するように、ドアをバタンと閉める。


玄関で靴を履くのももどかしいくらい、早くここから出たかった。


玄関のドアを閉めて、廊下で立ち尽くす。


しばらく動けなくて、そのままドアを背につけて空を見上げた。


時計を見ても、まだ11時。


さっきから一時間しか経っていない。


途端に我慢してた涙がポロポロとこぼれだす。


中に聞こえないように、声を押し殺して私は泣いた。


散々泣いて落ち着いた頃、鼻水をスンとすすって歩きだす。


やっぱり、来なきゃ良かった。


浮気とかそういう問題じゃなかった。


さとし自身が私にそういう感情を持てないんだと理解する。


大地のときはキスだって何回もしたくせに……


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