温め直したら、甘くなりました
「……客の前で抱きついたっていいだろ」
「それ、本気で言ってるの?」
「本気だ。茜は俺が好きじゃないのか?」
「好きよ」
「それなら俺を最優先に考えるべきだ。仕事中に安西の目を盗んで外に出る苦労を茜はわかってない」
私は、ため息をついた。
この人、意外に子供なんだわ。
拗ねた顔は可愛いけれど、ここで甘やかしたらきっと私がこれから苦労することになる。
そう思った私は、わざと彼を冷たく突き放した。
「集、今日は帰って」
「何故」
「私にも仕事があるの。私も忙しいの。これから結婚するのだからなおさら、集にはそれに慣れてもらわなきゃ」
私は椅子から立ち上がり、集を無視するように食器を片付け始めた。
あのお客さん、つくねを残したんだ……少したれが甘すぎたのかしら。
私の腕もまだまだね……
「茜」
「なに、まだ居たの?」
言ってから、その言い方は少しひどかったかなと気がついた。
でも今さら言葉は引っ込められないので、私は黙々と食器を流しに運んでいく。