温め直したら、甘くなりました

「茜はさ……俺のどこが好きで、結婚してくれたの?」



幾分落ち着いた集が、椅子に座り直して私に尋ねた。

私は店の天井を見上げ、集と出逢ったときのことを思い出してみる。


――――あれは確か、一年前の冬の、午後だった。


今夜は寒くなりそうだから鍋料理にでもしようかな、なんて考えながらこの店に出勤して、奥の部屋で着物に着替えて調理場に立った私。


味噌仕立てのスープを煮込みながら野菜を切っていると、突然ガラス製の店の引き戸を外からバンバン叩く音がした。


いつもお世話になっている八百屋さんやお肉屋さん、魚屋さん……それかこの店を貸してくれている大家さんなら、裏口のチャイムを鳴らしてくれるはず。

つまり、今もなお激しく戸を叩き続けているのはきっとお客さんだ。



「準備中の札が目に入らないのかしら……」



ため息をつきながら白い前掛けで手を拭き、私は仕方なく引き戸を開けた。

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