温め直したら、甘くなりました
気持ちのいい食べっぷりで最後の汁一滴まで飲み干した彼は、丼をカウンターに置くと、ものすごく幸せそうにはぁ〜と息を吐いた。
本当は、お料理で商売している私にとって無料で食事を提供するのはできれば避けたいこと……
でも、あんなに美味しそうに食べてもらえたんだから良しとするか。
そんな風に思って彼の使った食器を片付けていた時だった。
「あの、とても美味しかったのでお金を払いたいのですが、いくらでしょう?」
お金に困っている筈の彼が、そんなことを言い出した。
私はもちろん、とんでもないと言って首を横に振る。
「お客さんに出しているものとは違う、まかないみたいなものですから気になさらないで下さい」
「……そうですか。じゃあ、営業時間内にまたここへ来てもあのうどんは食べられないんですね」