温め直したら、甘くなりました
しばらく顎をさすりながら何か思案していた彼は、私が洗い物を済ませると同時に立ち上がってズボンのポケットから財布を取り出した。
その黒い皮財布の膨らみ方が尋常ではなくて、私は思わずじっとお札を取り出す彼の手元を見つめてしまう。
お金……あるじゃない。
「五万……いや、十万払いますから、また俺にあのうどんを作ってもらえませんか?」
「ちょっと待ってください!そんな、受け取れません。そこまで気に入って下さったのならまた今日と同じ時間に来てください。私、タダで作りますから!」
驚いたように目を丸くして私を見た彼。
お腹が一杯になったからか顔色がよくなっていて、意外といい男なんだということに気がついた。
眼鏡を外したところが見たいだなんて、場違いで不謹慎な欲求にも駆られる。
「……それなら。結婚しませんか?」
「え……?」
「俺、職業柄かなり乱れた生活を送ってるんですけど、あなたみたいに料理の上手な人が側に居てくれたら、もっと頑張れそうな気がする」