温め直したら、甘くなりました
若干桃色になりかけた脳内をリセットするために俺はぶんぶん首を横に振り、そして黒田凜子の手を払いのけて立ち上がった。
「これはただの生理現象であって、俺は断じてきみとどうにかなりたいなんて思ってない!神に誓って俺は茜一筋だ!!」
股間を指さしながら絶叫する俺を、彼女はぽかんと口を開けて見ていた。
……そうかそうか。俺たち夫婦の深い愛に言葉もないか。
まだ若いのだから仕方ない。これからきみも運命の人に出逢えるさ。
そんな人生の先輩じみたことを心の中で述べ、ふむふむと頷く俺に黒田凜子はぼそりとこう漏らした。
「……なんか、イメージと違う」
あっさりとテーブルの下から出て行った彼女は、乱れた髪を気だるげにかき上げると、鞄を持って部屋の扉に手をかけた。そしてこちらを振り返って言う。
「……奥さんも、相当な変わり者ですね。ああよかった、今日会わなかったら二階堂先生に幻想を抱いたままでした。まさかこんな変な人だったなんて思いませんでしたよ。
あ、ここの支払いはお願いしますね。先生の方が本売れてますし」
それじゃ、と赤いワンピースを翻して彼女はこの場を去った。
俺は緩められたベルトを直すこともせず、どすんと椅子に腰かけてため息をついた。
…やっぱり今日の天秤座は最悪の運勢かもしれない。何故俺がここの支払いを?
目的のものも得られなかったし、やはり茜におにぎりを作ってもらって仕事場で大人しくしているべきだったんだ。
……占い、恐るべし。