【続】隣の家の四兄弟
「うっ……」
うそ……!
ゆっくりと顔を左へと向ける。
そこには、私よりも先に、私の存在に気付いてたらしい聖二がいた。
「なっ、な、んでそこに……」
「……ココ、俺んちなんだけど」
「いや……そりゃそうなんですけど」
明らかに気持ちはぎくしゃくとしたままだ。
だけど、聖二の返しはいつもと変わらないと言われればそうとも感じて、どんな態度をしたらいいものかと頭を悩ます。
結果、何を口にしていいものかわからなくて黙り込んでしまう。
すると、聖二が「ふー」と溜め息なのか、紫煙を出すためなのかわからない息遣いにドキリとする。
ちらっと横目で聖二を見ると、変わらず柵に背を預けるようにして顔をあげてた。
すると、ぱちっと目が合うと、柵から手を降ろして姿勢を正してしまう。
「……チハル(アイツ)……いんの?」
「えっ。いや、わかんない、けど……」
「……そ」
その先に続く言葉が知りたいのに、会話が打ち止めされてモヤモヤとする。
この微妙な空気がしんどくて、なにかを口にしなきゃと慌てた私はさらに悪循環を呼ぶ。
「あ、アキラはっ?」
「……とっくに帰ったけど」
「え?!うそ!てっきり……」
「てっきり」、まだ居座ってるものだと思ってた。
拍子抜けした私は、それ以降の言葉を飲み込んだ。
聖二がまだ長い煙草を携帯灰皿に押し込んで、一呼吸開けたのちに言う。