【続】隣の家の四兄弟
少し穏やかな顔つきになった三那斗が、私よりも2回り以上大きいであろう外靴をボンッと投げ置く。
お互いに上靴を靴箱に押し込めると、そのまま玄関の出口まで一緒に歩いた。
「……じゃ。オレ、チャリだから」
「ああ、うん。気をつけてね」
「おぅ」
ポケットに手を突っ込んで駐輪場へと向かう三那斗をほんの少し見送った。
数メートル歩き進めた三那斗の背中を見てると、ぴたりと不意に足を止め、くるりと私に振り返る。
「……聖二兄の話もちゃんと聞いてやってくれよな」
ボソッとまるで不機嫌そうに早口で言われる。
私の返事なんか関係なく、言い終えたらすぐに三那斗は走って行ってしまった。
「『ちゃんと』っていっても……」
それが出来てたら、こんなふうになってないんだよね……。
「はぁ」と深い溜め息を吐き、三那斗が言った言葉を反芻しながらバス停へと向かった。
乗り継ぎを駆使して辿り着いた街中。
首が痛くなるほどの高層ビルに囲まれた場所のここには、滅多に足を伸ばすことはない。
買い物はわりと近所で済ませられるし、洋服も未だに私はお母さんが適当に選んで持ってきてくれるものから選んで着てたりするから。
その服のセンスも、私の好みでもあるし、やっぱり仕事柄選ぶのが上手だと思う。
幾多もあるビルの中から、ひとつの建物の前で立ち止まる。
そこの看板の名前を確認すると、深呼吸をしてから足を踏み入れた。