【続】隣の家の四兄弟

カメラを持ってる人と少し話をしていたチハルが、ようやく私に気付いたようで駆け寄って来る。
チハルが名前を呼び、こっちに来ることで、スタッフ全員の目が私に向けられてる気がして俯いた。


「夏実サンとは会えた?」
「う、うん」
「そっか。ぼくの仕事してるトコも見れたー?」
「うん。見た。やっぱりスゴイ、チハルは」


「そうかなー」とふにゃりと笑うチハルは、いつものチハル。
つい数分前、カメラを向けられていた人と同一人物だというのが信じられない。


「あとはね。今のショット確認してOKだったら終わりのハズなんだけど」
「あ、そうなんだ。ちょっと残念」
「ザンネン?」
「もう少し、別人のチハル、見たかったかも」
「別人?ぼくはぼくなのに。ヘンなのー」


「あはは」と笑うチハルは、後方のカメラマンに呼ばれて行ってしまった。
いつの間にかお母さんも見当たらない中で、ぽつんと一人、スタジオに取り残された感じがする。

きょろきょろとしすぎると目立つかもしれないし、迷惑にはならないように、なるべく存在感を消しながら隅に立つ。

そわそわとしてきた頃、チハルがこちらをくるりと振り返って指をさす。
きょとん、としたままチハルを見つめてると、隣のカメラマンも私を見ているようで、余計に落ち着かなくなる。


……な、なに?私を見てる?


後ろを小さく振り返るけど、背後は壁で、左右にも人はいない。
どう考えても人間は私だけ。だけど、私なんかを見てなんの話があるって言うの?


動揺したままチハルの動向を窺っていると、満面の笑みを浮かべたチハルが私の元に再び駆けてきた。
目の前で立ち止まるチハルを見上げると同時に、突然チハルが言う。

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