【続】隣の家の四兄弟
「ハイ。じゃーココに座って?」
チハルと同じくらいの年齢の男の人に促され、渋々椅子に腰を下ろす。
正面の大きな鏡越しにその男の人を見る。
すると、ぱちりと目が合うと、ニコッと笑顔を向けられた。
「ちょっと、触るね」
「え!」
「ああ。違う違う。メイク。まだ若いし、そんなにする必要ないけど、せっかくだからちょっと変身させちゃおう」
「め、メイク……」
なんだ、メイクか。
「触る」とかって意味履き違えてたのが恥ずかしい。
かぁっと赤くなった顔を隠すように俯くと、すぐに大きな手にそれを阻止される。
「上、向いててね」
目の前の台に手早くいろんなものを広げると、その人は手際よく私の顔に色々と手を掛け始めた。
イマドキ、中学生でもメイクはしてるけど、実は私はあんまりメイクをしない。
休みの日ならなおさら。
「いつもプロしか相手にしてないから、すごく新鮮。楽しいなぁ」
そういう男の人は、なんだか本当に楽しそうにメイクをしてくれていて。
かくいう私も、こんな状況で落ち着かない中で、やっぱりどんなふうに変身させてくれるのかとドキドキしながら淡い期待を膨らませる。
「目、ちょっと閉じて」
美容室もそうだけど。
心地いい手の動きと、落ち着く空気。
けれど、きっと素敵にしてくれてるんだろうというドキドキ感もあって、終わった後鏡に映る自分をみるのが楽しみで。
今はまさにその状況。
しかもメイクなんてしてもらうのは初めてなわけだから、否が応でも期待してしまう。