【続】隣の家の四兄弟
「あからさまな“がっかり”具合だな……」
「だ、だって…」
「ホント、わかりやすい」
がっかりしてるのわかってるなら、笑わなくったっていいじゃない!
余計に傷つくっての。
はっきりと口に『がっかり』って出された私は、余計に落ち込んで、なんだか泣きたくなってきた。
だめだ。なんか、“泣くな”って自分に言い聞かせようとすればするほど、視界が滲んでく。
「おい。泣く気か?」
「……」
ほんっと、聖二って悪魔。
普通、本当に泣きそうになってる女の子が目の前にいたら、そんなこと言わないと思う。
私は、そうやって反抗したかったけど、喋ると涙が頬を伝いそうで、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「泣く程がっかりしてくれてんなら、突然の訪問くらい、許されるよな?」
「ふぇ…っ?」
私がもう一度顔を上げると、聖二が親指で目の前の玄関を指していた。
その指でさされた方向を確認する。
――――え。
「1015……うち?」
そこは綾瀬家を通り越した、中川家――うちだ。
ぽかんとして立っていると、聖二が言う。
「正直、行くとこ考えてたわけじゃないし。お前がそんなに“役目”果たしたい理由があるなら、ここで聞いてやるよ。ポテサラ作りながらな」
「え…? 怒ってたわけじゃ――…」
「前も言ったけど、兄弟相手にどーのっていうのはお前次第だっつっただろ」
「あ……」
この前のベランダで、私が聖二だけを想ってるんなら問題ない、って言ってた。
それよりも――――
「それと、考えてること、聞かせろ」
唯一求められたのは、私の心の内を聖二に聞かせること。
「…もうっ。うちにじゃがいもがなかったらどーすんの?」
「そん時に考える」
私は零れ掛けた涙を拭って、笑顔で自分の家のドアを開けた。