製菓男子。
「ご存知だと思うんですけど、わたし兄と母親が違うんですよね」


僕は初耳だったけれど、ミツキは知っているようだった。
藤波さんは一直線に瞳をミツキに向けていて、それを受け止めるようにミツキは頷いている。


「幼稚園の頃だったと思うんですけど、“今のおかあさんは本当のおかあさんじゃない”って事実を知って、わたしが家を飛び出したことがあったんです。しかも、雪の中を。そのとき小学生だった兄も探してくれて―――わたし、とんでもないところにいたみたいで」


藤波さんは雪かきでできた山のようなかたまりの場所で、足がはまって抜け出せなくなっていた。
そして助けにきた藤波も同じようになってしまった。


「兄はもとから風邪を引いていたんですけど、悪化してしまって、大人が助けに来る前に“オレが死ぬ”って強烈に思ったそうです」


藤波さんはミツキ相手だといつになく饒舌に話しているような気がする。


「あー、わかった。覚えてる。四年生くらいだったよな、それ。記録的な豪雪だった年だろ。俺見舞いに行った覚えがあるよ。でもそれが最後の入院でしょ?」


「最後の入院?」と訊く。
僕は高校以前の藤波を知らない。


「あいつ、喘息持ってたんだよ。身体も弱かったし、だから結構頻繁に休んでたよな。今じゃ信じらんないけど」
「まったくもってそうですよね。今は“唯我独尊”が歩いているような感じですもん」
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