製菓男子。
「若葉神社ですか、えっと……」


若葉神社は数少ない、地元の観光スポットのひとつだ。
毎年十二月三日に行われる若葉夜祭りは日本でも珍しい冬の花火大会が行われる。
一番賑わうのはその十二月だけれど、縁結びの神さまとして日々ご活躍されている神社でもある。
そのためか荒川さんも細かく記載してくれていた。


「この店から左に行くと交差点があって、駅のほうに向かってください。駅に着いたら右に曲がってくださいね。しばらくすると祭り会館があるんですけど、その道反対が神社です。そこからでも入れるんですけど、鳥居からきちんとくぐりたい場合はぐるりとまわりこむ必要があって―――」
「そうなの? でも口頭だとよくわかんないなぁ。外出て具体的に教えてくれるとわかりやすいんだけど」


(わたし、ごちゃごちゃ言いすぎたかな)


男性の後ろに並んでいたお客さんが時計を気にしている。
先ほどまで塩谷さんに叱れていたお客さんは満足して帰ったようだったので、レジを代わってもらった。


店を出ると、男性にもう一度同じ説明をする。


「っと、この道をまず左に行ってもらって――――」


今度は手振りを加えて。
けれどその努力は空しく、男性客は「目にゴミが入った」と言って目を擦り、案内を中断させた。


「大丈夫、ですか?」


訊ねると、男性はまっすぐにわたしの顔を見た。
視線が真正面からあう。
そんなことはわたしが生きてきた中でそうそう起こるわけがなく、金魚のようにぱくぱくしてしまう。
なにせ宮崎さん、塩谷さん、兄でさえ視線をあわせないようにしているのに、初対面の人にだなんて恥ずかしいことこの上ない。
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