製菓男子。
「僕の目、大丈夫そうに見えますか?」
「へ?」


予想外の質問に、間の抜けた声が喉から溢れた。
恥ずかしさがさらに助長されて、顔が熱くて仕方がない。
顔から火が吹くとはいい得て妙だと見当違いのことが脳裏に浮かんだ。


「確認してもらってもいいですか?」
「じゃあじゃあ、あの、鏡持ってきますね」


わたしには鏡を常備する習慣はないけれど、塩谷さんはいつもバッグに忍ばせていたような気がする。


「どうか見てもらえませんか?」
「見るって、どうやって、ですか?」
「ボクの顔、覗き込んでもらっていいですか?」


時間がないと言われてしまえば、そうするしかないような気がしてくる。
落ち着け落ち着けと、お客さんの瞳を見ようとわたしは努力をしてみる。


お客さんはお団子のようなまあるい顔にごまがついているような小さな目をしていた。
近づかないと目の異常なんてわからない。
でも、体型がいいお客さんだから、近づいたらおなかにぶつかってしまいそう。


「大丈夫そうに、見えますけど―――」


遠めに瞳を見つめる。
少なくとも目は赤くなっていない。


「おねえさんの瞳は綺麗だよね。ボクは目がコンプレックスなんだ。ほら見て、黒目が小さいでしょ」


(そんなこと言われても困るんだけど)
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