製菓男子。
戸惑っているとそのお客さんが強くわたしの腕を掴んだ。
痕が残るんじゃないかって思うほどきつく。


「や、やめてください」


自分では大きい声で言ったつもりだったのだけれど、相手に拒否が伝わらない。


「ねえ、ボクの瞳見てみて」


(この人はいったい、わたしになにをさせたいの? 見たらそれで終わるの? これじゃ道案内なんてできないっ)


知らない人に、不可解なことを強要される。
理不尽なことはたくさん受けてきたけれど、こんなことは初めてで、どうしていいかわからない。
頭の中がぐるぐる、船酔いしたみたいに回って気持ちがわるい。


「お姉さんの瞳、とってもかわいいから近くで見ていい? 参考にしたいんだ」


男性の手がわたしのもう一方の手をとらえようとしている。


「ねえいいでしょ? じっくり見せてくれる? 今が無理なら、仕事が終わってからでもいいよ」


わたしは身を捩って、手をさける。
けれど執拗に追ってくる。


(わたしにこれ以上触らないで)


「ごめんなさい、無理です」


(貴方の未来なんて見たくない、わたしの手に触らないで)


硬く目を瞑り短い悲鳴を上げる。
< 131 / 236 >

この作品をシェア

pagetop