製菓男子。
「今日もう閉店する?」


宮崎さんはわたしの腕を掴んだまま、そんな状態のわたしを見下ろしている。
宮崎さんの瞳は観音さまみたいな神々しさを感じる。


「でも、まだ―――」


ふと店の中を見る。
ガラス張りだから、全体が見渡せる。
中にはお客さんがいて、塩谷さんが普段どおりに接客をしている。


「声が聞えたみたい、窓を開けていたから」


宮崎さんを倣うようにわたしも二階を仰いだ。
そこには三人の女性がいて、身を乗り出すように「大丈夫だった?」と次々に声をかけてくれた。
その眼差しはでき立ての蒸しパンのようにあたたかいやわらかさで、わたしの強張った身体をほどいてくれる。


今までわたしを見つめる女性の瞳は、嫉妬を孕んでいるものが多かった。
または、蔑んだものが。
どうしてこんな目にあわなきゃいけないんだろうと、いつも思っていた。


「ありがとう、ございます」


言葉に出してみると、涙が出てきた。


「とっても、助かりました」
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