製菓男子。
父との「高校を卒業する」という最低限の約束を守ったわたしは、その決意を決行すべく卒業式の翌日から引きこもり生活に入った。
けれどその生活は決してひとりでできるようなことではなくて、兄と父の協力が不可欠だった。


父はよく、家を空ける人だ。
それは仕事であることも多かったけれど、大概女性の影がちらついていた。
父はわたしの特異な体質に対して開き直りに入っていて、嘘をつかない。
「チヅルに触れらたら結局ばれちゃうんだし」というノリなんだと思う。


けれど兄に対しては平気で大嘘をつく。


「産気づいた部下を病院に連れて行ったんだ。ほら、バスに乗せるなんてできないだろ?」


(「おとうさんの会社は一体何人産気づけば気がすむんだよ」とわたしは心の中で悪態をつく)


またあるときは、


「出張先で接待があって、もてなされていたら気分がよくなって駅で寝てたんだよね」


(おとうさん、首にキスマークついてるから説得力ないよ)


子供でも嘘だと気づくような言いわけは、体育会系単細胞脳兄貴は疑わない。
だから嘘が発覚したときの反動がすさまじいことになるのだけれど。


(後片づけが大変なんだよね。殴りあいにならないから、壁がぼっこぼこ)


だから自然と兄が必要なものを買ってくることが多い。
わたしが一週間分の食材と日用品などの必要なものをメモに書いて、それを兄が日曜日に買ってくる。
そして不足分を平日に父が買い足すといった具合に分担していた。


現在父は恋人と旅行中で、兄は絶賛寝込み中。
明日引きこもるには、今日買い物をしなくてはならない。
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