製菓男子。
「やっぱりそうじゃん。アンティエアーのおねえさん」


自動ドアの開閉する音と一緒に背後から「ツバサ先帰るぞ」という声がした。
それに「おう、お疲れ」と目の前の少年が手を上げてそれに応えている。


「午前中部活だったんだ。ぼく、音楽部なんだよ」


このスーパーの中の一角にはマクドナルドが入っている。
部活が終わると友達とここでお昼ご飯を食べていたのだそうだ。
今日のアルバイトは夕方かららしい。


「ぼくのことわかんない? この姿で一度会ってるんだけどな」


クイズの出題者のように、少年はヒントを出していく。
おうちが洋裁店であること、宮崎さんとは家が隣同士ということ、書店でアルバイトをしていること、そして毎週土曜日にうちの店に来ること。


「ポルボロンを毎回買っていく―――」
「そうそう、それぼく」


目の前のツバサくんと、土曜日のロリータの輪郭がはっきりわたしの中であわさった。
宮崎さんが言っていたツバサくんは、このツバサくんだったんだ。


(ちゃんと男の子の格好してる)


声に出さなくてもそれが顔に出ていたようで、ツバサくんは「これが本当のぼくだよ」と苦笑いしている。
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