製菓男子。
「どうやらリコちゃんの、亡くなったお父さんは、スペインの方みたいだね」
「だからポルボロンを毎週のように、ツバサくんは買って行ったんでしょうか? でもポルボロンって、クリスマスのお菓子、ですよね?」


ポルボロンはスペインの修道院発の伝統お菓子だったはずだ。
クリスマスが近づくと、おうちで手作りではなくて、お気に入りのお店や修道院に買いに行くのが一般的と、以前母から譲り受けた本で読んだ気がする。


「ツバサくんは、そこまで深く考えるような子じゃないだろうなぁ、どう見たって」


兄も「ド天然系」という印象を持っていた。


「リコちゃんって子、昔から外見で目立っていたみたい。だからよくからかわれていたみたいなんだけど、ツバサくんが相当懐いていたから、中学まではいじめとか無縁だったみたいよ?」


それらは宮崎さんから得た知識ではないらしい。


「ゼンは説明、苦手だからね」


ツバサくんと同行していた、中学からの友人が的確に語ってくれたという。


「ツバサくんってちっこいし、無邪気だし、そのくせやさしいし、突飛なこともするから、一緒にいて飽きない子だろうなってことが俺にもわかるよ。そんなツバサくんだから、クリスマスのことを知っていたとしても、ジンクス優先だったんだろうね。それ以前にそれしか浮かばなかったってこともありえそうだけど」


わたしも思わず頷いてしまう。


「まぁ、お菓子って食べたいときに作るものだと思うし、それには納得するな」


塩谷さんはそうフォローしてから、コーヒーをカタンと音を立てて作業台に置いた。
急に押黙り笑顔を消した塩谷さんは、まっすぐにわたしを見下ろした。
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