製菓男子。
「ねえ、チヅルちゃん。食べながら俺の昔話を聞いてくれる?」


沈黙に響いた強制力のある声が、わたしを窺っている。


「昔話、ですか?」
「そう、昔話。長くなるけど、きみに聞いて欲しいんだ」


塩谷さんはわたしのマグカップに追加の紅茶を注いでから、ポルボロンをお皿の上に並べた。
そのお菓子はまだ冷め切っていなかったけれど、四角い形を保っている。


「チヅルちゃんは絶対また泣くだろうな。今のうちにティッシュ用意しとこうか。今でさえ、泣きそうな顔してるもんね」


塩谷さんは実際にボックスティッシュをレジ台から持ってきた。
それだけではなく、タオルまで用意している。
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