製菓男子。
手に触れられていて、でもいやじゃなくて、キスされて、そしてそれもいやじゃなくて。


「そ、そうなりますね!」


ぐるぐる脳はわたしに明るい声を出せと命令していて、「場にそぐわないだろ」と今度は正常に機能のする細胞のひとつが否定していた。


こういう脳同士で喧嘩したときに必ず出る命令がふたつある。


「ごめんなさい」


選択肢は「とにかく謝る」と「とにかく逃げる」だ。
両方選んだつもりが、こうしていまだにぐるぐると脳内で講釈しているので、当然ながら離れ遅れ、宮崎さんは空いた手でわたしの腰をぐっと引き寄せて逃亡を阻止した。


「その顔犯罪。捕まえてって言ってるよ?」


普段から無表情に近い顔ですごしているのに、こういうときだけ宮崎さんは感情を表に出している。
目もとは少し意地悪で、けれどほっぺたは薄く色づいていて、わたしを誘惑する。
そのギャップにチョコレートのような甘い眩暈がしてくるくらいだ。


(言ってない。わたしは断じて言ってないんですけど―――)
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