製菓男子。
そんな元凶である兄と兄の友人たちが乗り込んできたのが一週間ほど前の月曜日だった。


月曜日というのはわたしにとって鬼門だ。
サザエさん症候群をたっぷり引きずった休日の翌日というのはかわいいもので、交通事故や自殺現場を目撃したり、両親が離婚をしたり、登校中変質者に襲われそうになったり、同級生からのいやがらせが過激になったりと、そういう恐い目にあうのは決まって月曜日だった。
できるなら大人しくすごしていたいのに、やっぱりそれを月曜日が許してくれなかった。


どうやら兄の友人ふたりが営む製菓店で“パンとケーキ教室”を開くらしい。


その講師も務めるひとりが準備や指導している間、店を手伝ってくれる人を探していたそうだ。
常日頃から「仕事しろ」という現実困難な言葉を投げ続けていた兄だから、その申し出は神の思し召しだったのだろうと思う。
いやがるわたしがこもる部屋に嬉々として乗り込んで、拉致監禁し、美容院へと強制連行された。
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