製菓男子。
わたしは人の手に触れると、その相手の少し先の未来が見えてしまう、不可思議な力を持っている。
それはテストをカンニングするようなもので、盗み見ているのと一緒だ。
カンニングは不正行為で、処罰だって受ける。
ずるばかりするわたしは、この世にいないほうがいいと、牢屋に入れるべきだと強く思う。


やっぱりと言った塩谷さんは、以前にもわたしの犯罪行為を見ているのだろうか。


「泣かせるつもりじゃ、なかったんだけどな」


その言葉で泣いているのに気づいて、落ちてくる雫を一生懸命両手で拭った。
けれどその手は、豪雨に打たれる車のワイパーのようで、視界はわるいままだった。


「ごめんなさいっ。泣くつもりじゃなかったんですけど―――」


“泣くのは逃げだ”と人は言う。
学生時代の同級生も、先輩も、先生も、兄だってそう言った。
“泣くのは自分に甘いからだ”と。
泣かずにきちんと人の話を聞きなさい。
泣くだけで相手が悪者になってしまうから。
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