製菓男子。
そんなこと、わかっている。


骨身に染みて、わかっているつもり。


でも血管を巡る血のように、少しの傷でもそこから涙が出てしまう。
それはきっと、人から見て「わかっていない」のと一緒で、イラッとする原因で、わたしがきらわれる理由のひとつなんだと思う。


わかっている、わかっているんだけど。


(どうしたらいいんだろう。ずっとわからないままで)


「もう訊かないから、泣きやんでくれないかな?」


塩谷さんの手が、先ほどヒロくんにしたように、わたしの頭部に置かれた。
ヒロくんと違うのは、それがぽんぽんと、まるであやすように一定のリズムを刻んでいるところ。


「交換条件じゃないけど、どうしてジャムクッキーにしたのか、教えてくれる?」


わたしは腹式呼吸をするように、深く深く息をする。
]塩谷さんの手を肘で避けることができないし、手で弾いてその手に触れることが恐い。
大人だと、特にだ。


「ヒロくんのお母さんがイチゴジャムをすきだとわかったのは、そのときヒロくんの視線と心と、一緒になっているから」
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