姫はワケあり黒猫様



部屋の外に出ると、玲は壁に凭れて腕組みをしていた。




「行くぞ」


『え?もう?』



「送れると厄介なことになる」





何が?



と聞きたかったが、玲は有無を言わせず私の腕を掴んでマンションから出た。







そして、マンションの緊急用の仮車庫に留めてある黒のバイクへと向かった。





『計画無しでここまで来れるとは、すごいね』



「俺だからな」



『うるさいわ』



頭を叩いてやりたがったが、玲の頭は上にある為無駄なことになりそうだと、無意識に上がっていた腕を下げた。



玲はハンドルにかけてあったメットを私の頭に被せて顎下でとめた。



その感触をくすぐったく思いながらおとなしくしていると、玲は口を開いた。





「乗れ」



『……』



……無理です。



「……乗れねぇのか?」



『……ひゃい。』



「はぁ……」と大きな溜息を吐いた玲に苛立ちながら玲を見ていると、玲は両腕を私の脇に挟んでひょっと持ち上げた。





『ふにゃっ‼』



「マジ、ネコだなお前」



そう関心したように呟きながら玲は私の体をバイクに跨らせた。





「じゃ、行くぞ」



『れ、玲は?メット』




「……無い」




私のこれはぶかぶかだし、多分…いや、確実に玲のだろう。




『悪いよ、玲!』



「いい。被ってろ」




そう言うと、自分の腰に私の腕を回させてしっかりと握らせた。






「行くぞ」





案外ゆっくり進み出したバイクは心地よい風を私に吹かせてくれた。







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