あなたが教えてくれた世界
「……良い馬だ」
着地の衝撃を受け流しながら、ハリスは呟いた。
「……お見事」
すぐ後ろで見ていたカルロは、口先で賛辞を送る。
その、思わず失速したカルロの頭の上を。
──ザッ
再び、軽やかな音が響き。
──イグナスが、跳んでいた。
身体全体が、宙に浮く。
馬の身体の流動が、鞍を通して伝わってくる。
呆然と見守る衛兵の顔が、門が、真下に見える。
時間にしては、ほんの一瞬。けれど、とても長く感じる時間。
そののち──。
ザザッ……
砂利を踏みしめる音をたて、イグナスはハリスのすぐ側に着地する。
「やるねえ、イグナスも……」
一方、門の外に残されたカルロは、同じように失速している後ろのブレンダを見やる。
ハリスを見ても躊躇せず跳躍に移ったイグナスと違い、二人はこうしてその勢いを完全に逃してしまっている。
こうなってしまっては、高さのある門を飛び越えることは不可能。
もう一度衛兵たちを見ると、侵入したイグナス達に向かうか、カルロ達の侵入を防ぐかで迷いが生じ、戸惑いのようなものすら感じてくる。
そして、門の閂はどうしたことか外れている。
──これなら、いける。