あなたが教えてくれた世界
玄関を破るのは思っていたよりも容易だった。
ハリスを先頭にして馬ごと扉を破った一行は、予想していた向こうからの襲撃がなかったことに驚いた。
門にいた衛兵たちはまだ混乱しつつ走って追いかけていたが、距離もあるし当分追い付かないだろう。
天井の高いエントランスホールは、異様なほど平穏で……静かすぎる。
ハリスは振り返って、右手で止まるように命じた。
「……降りるんだ。ここからは歩いていく。馬だと足音が響く。」
その言葉に三人は頷き、静かに鞍から降りる。
無駄に響く馬で突撃するのは、勢いはつくが一方的に敵から見つかる恐れにもつながる。賢明な判断だとブレンダは思った。
ハリスは廊下に面した部屋を指し示した。
「馬たちはこの部屋に置いていこう。捕まらないか心残りだけど、アルディス様を見つけたら早く脱出するための足にもなるし。庭に面してるから、いざとなれば馬の帰巣本能が働いて逃げ出すことも出来るはずだ。」
頷いて、轡(くつわ)に手をかけ、促された部屋に入った。
確かに大きな窓があり、危険を回避したら馬たちも逃げ出せるだろう。
追っ手は自分達を探して奥に飛び込むはずだから、入り口付近のこの部屋がチェックされるとは考えにくいし、俊敏に目的を果たせれば、この馬に乗っての脱出も可能なはずだ。
部屋の中ごろで、ブレンダは轡から手を離した。
後から続いたカルロ、イグナスも、同じようにしている。
ふと気になって、彼女は隣の男に声をかけた。
「そう言えば……先ほどは、大丈夫だったのか」
「え?さっき?」
「馬のことだ」