あなたが教えてくれた世界
リリアスは、そう言えば何も飲まずに料理 を食べていたとを自覚する。
「……お願いします」
なるべく自然を装って答えるリリアス。あ まり大胆に話し込んで、周りから彼女を不 審に思われてはいけない。
未成年用のアルコールの少ない葡萄の液体 をグラスに注ぎながら、オリビアは彼女に 囁いた。
「随分ご思案のようじゃない?何か収穫は あったの?」
同じく小声でリリアスも囁く。
「まだ確実にではないけど、怪しいと睨ん でいる人ならいる」
もちろん、プラニアスのセントハーヴェス 侯爵の事だ。直感だけだが、ただの留学目 的だけでないのは確かだ。
「そう。あと、しばらくしたら皇王様に呼 ばれると思うわよ」
「……どう言うこと?」
心当たりがないのでそう聞き返すリリアス 。
「あれ、気付いてなかった?わざわざ皇王 様が呼びつけるなんて、よほど重要な用事 があると睨んだだけよ」
確かに考えるとそうだ。リリアスは頷いた 。
何はともあれ良かった。これで心の準備が 出来るというものである。
注ぎ終えたオリビアは、ボトルに栓を閉め ながらふと思い出したように付け加えた。
「そう言えば、さっきパニック起こしてた みたいだったけど、あれ大丈夫だった?」
リリアスは驚く。彼女は仕事の合間に遠く から眺めただけで自分の異変に気付いたと 言うのか。
やはりあなどれないなと敬服しながら、彼 女に囁き返した。
「大丈夫。詳しくは後で話すけど、周りに は気付かれなかったから……」
「そう。でも、そんなこと今まであったかしら?」
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