あなたが教えてくれた世界



思わず裏返った声を出すリリアス。こんな 問いは今までで初めてだった。


「侯爵、私などの考えなど、参考には取る に足らないものですが……」


答えるのに躊躇う。この国では普通、女性 は政治に関する事を口にしない。例え女王 であろうと何だろうと、それは変わらない のだ。


「構わない。それに、忘れているようです が私にこの国の常識は通用しませんよ」


ウインク付きで侯爵は言った。全て承知の うちなのだ。


(……何を企んでいるの?)


ただの好奇心なのだろうか。それとも…… 。


しかし、このまま思案しても進展が無いの で、彼女は半ばどうにでもなれという気持 ちで申し出に応える事にした。


「本当によろしければ、ですが……。私は 、戦争は好きではありません」


あくまで控え目に、彼女は話し出した。


「火花と沢山の命を散らして要求を通そう と言うのは間違っていると思います。それ は野生の獣と同じです」


淡々と語るリリアス。侯爵はと見ると、フ ォークに牛のローストを突き刺したまま、 真剣な顔でこちらの話に聞き入っていた。


その視線に戸惑いつつ、彼女は大事な後半 部分に入った。


「……しかし、このような理想論だけで実 際がうまく回らないのも知っています。武 装派の方々の意見ももっともですし……」


これは渋々認めたものだった。戦争が嫌い だからと言って、今すぐプラニアスのよう な路線に変更するのは現実的に無理だから である。


「それに、私はあくまで一人の娘に過ぎま せんから。ですからこうなってしまって、 わざわざ声を荒げて主張しようとは思いま せん」


自分の手元を見つめながらリリアスはそう 言った。もちろん、今のは全て本音である 。


侯爵は黙り込み、何かを深く考え込んでいた。



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