あなたが教えてくれた世界



何かおかしな事を言っただろうかとリリア スは不安になる。これは、かなり少数派の 意見なのである。


やはり月並みに武装派の主張を言えば良か ったかとも思った。そちらの方が侯爵にと っても参考になっただろう。


しかし、考えを言えと要求してきたのは彼 の方なのだ。こちらが合わせてやることは 、多分しなくていいはずだ。


しばらくたって、ようやく侯爵が口を開い た。


「……なるほど。見上げた王女様だ。普通 なら欲深い考えを見せる者が多いのに対し て、あなたの持論は……」


よくわからないが、彼はかなり感動してい るらしい。


思わぬ反応に、彼女はどう反応すれば良い か分からずにかしこまってしまった。


「確かにこれは陛下がおっしゃったように 、失うのには惜しい……」


耳ざとい彼女はその小さな呟きを聞き逃さ なかった。


「どういう意味なのです?その……失うの には惜しいと言うのは」


彼は片方の眉を少し動かした。


「その通りの意味ですよ。いや実はね、デ ィオバウンとの和平にあなたを嫁がせると いう案が出ているらしくて……」


「……私を……?」


リリアスは目を見開いた。初耳だったので ある。


そのような話は珍しい事ではない。あまり 国交の芳しくない国と血縁関係をもつ事で お互い歩み寄ろうという意図なのだ。


現にリリアスの姉で第一王女であったアム ラルスも、ペテラール諸島王国の王子と結 婚している。


それはちゃんと知っている。だが、自分と は縁遠い話だとばかり思っていたので、少 々面食らってしまった。


「……そうなのですか……」


しかし、そうならなかったとしても、いず れ誰か勢力の強い者に嫁いで王家の影響力 を増やすことが自分の役目なのである。



        ─35─
< 35 / 274 >

この作品をシェア

pagetop