あなたが教えてくれた世界


(わからない……)


ますます侯爵が何者なのかわからなくなっ てしまった。


彼は今、再びリリアスの父のもとへ向かい 、何か話している。他の人のところへ行く のではなかったのだろうか。


と、その二人と誰か厳めしい顔つきをした 男性がホールの最奥部に向かい始めた。


あそこには、ホールの上にある客室に行く ための階段がある。どこに行くのだろうか 。


と、セントハーヴェス侯爵が不意にこちら を向き、片目をつぶって見せた。


(……何のつもりだろう)


わからない。わからない事だらけだ。わか ることと言ったらやはり油断がならないことくらいか。


彼女は疲れさえも感じながら酒でも微炭酸 の液体でもなくただの水を飲んだ。


「──久しぶりね、アルディス」


と、また声がかかった。今度は声に覚えが あったのと、もう驚くだけの気力も残って いなかったのもあって彼女はあまり驚かな かった。


「お母様!!お久しぶりです」


相手は、殆ど半年ぶりの母親だった。


女王であるアムネリス・デ・イルサレム( 本名はアイトリス)は、30代後半のまだ美 しい女性である。


皇王とは別居中で、最近は離宮の離れに住 んでいるのだと言う。


「アルディス、少し背がのびたかしら?で も、まだまだ追いついてないようだから安 心したわ」


そう言いながら彼女は普通に向かいの席に 座り、リリアスもそれを歓迎した。


「お母様もお変わりないようで安心しまし た。最近はどうでしたか?」


「最近?そうね、ここの外にある庭園に入 り浸りよ。薔薇がとても綺麗なの。そうだ 、今度一緒に回らない?」




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