あなたが教えてくれた世界



久々に見る母親の顔は、本宮にいた頃のそ れより生き生きしている様に見える。


その様子を見ているうちに、リリアスの気 分も明るくなり、二人は笑みを綻ばせなが ら話していた。


「是非ご一緒したいです。離宮の薔薇園の 評判は度々耳にしていましたもの」


「そう。あなたのその髪のような色をした のもあるのよ」


「そうなのですか。とても見てみたいです 」


リリアスはとても充実感を感じていた。し かも、しばらく話してなかったぶん、話題 はつきそうにないである。


ところが、彼女は話しながら、突然不安げ な目つきになり、母親を見つめた。


そして、少し声音を落として恐々尋ねてみ る。


「……お母様、やはり、本宮に戻っていら っしゃる予定はないのですね……?」


リトリスもまた、それまでの笑顔を引かせ 、彼女を残念そうな目で見つめた。


「……ごめんなさいアルディス……あそこ には、もう私の居場所はないの。皇王様は 私を見て下さらないのですもの」


彼女は目を伏せた。わかってはいても、寂 しかった。


それでも何とか気丈な部分を集め、明るく 努めながら言う。


「大丈夫。わかっていますお母様。私も無 理を言っているのではないのです」


「……そう、ありがとう」


リトリスも目を伏せた。


今、このテーブルの周りにだけ気詰まりな 雰囲気が訪れてしまっている。


リリアスはあまりの空気に耐えきれずに立 ち上がった。


「お母様、私はもう食事を終えましたから 、席を外します。後はお母様がゆっくり過 ごして下さい」


母親は何か言おうとしていたのだが、彼女 は素早く背を向け、すぐにその場から立ち 去った。



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