あなたが教えてくれた世界



「……はい?」


あまりに突拍子もない話だったために、リ リアスは始め意味さえ掴めなかった。


「……そのような事は、許されるのでしょ うか」


徐々に意味が理解出来てきた彼女はためら いがちにそう言う。


「もちろん、名目は他に何度でも用意出来 るだろう。例えば、隣国プラニアスへの留 学、とか」


フレグリオのあとに続けて、セントハーヴ ェス侯爵が喋り始めた。


「実は私の親戚にはもう話をつけてあるん だ。あっちに着いて出迎える手はずはつい ている」


「……そうなのですか」


他に言うことも思い浮かばず、彼女はそう 言った。


そしてまたフレグリオが口を開いた。


「そして、こちらにいるのが軍の将校であ るレオドルだ。アルディスも会ったことが あるだろう?」


「はい。お久しぶりです」


リリアスの挨拶に、彼は黙ったまま軽く会 釈をするだけで答えた。


無愛想な応え方である。彼女の周りにはこ のような態度をとる者は殆どいない。それ が新鮮に感じられて、悪い印象は受けなか った。


そう言えば、この男は昔から、変に貴族に 媚びない信念をもっていた気がする。立場 が複雑な父親と対等で親密な仲でいるのも 納得できる。


「レオドルが、お前の護衛を担当してくれ る騎士を選んでくれたのだ」


と、フレグリオがそこまで言った時、黙っ ていたレオドルがものすごい勢いで口をは さんできた。


「まだ目星をつけただけだ。話もしていな いぞ。それに、実施するかどうかの決定も まだだろう」


「……わかった。訂正する。選んでくれる 予定の人だよ」




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