あなたが教えてくれた世界
いくらか決まり悪げな顔をしたあと、皇王 は詳しい作戦を話始める。
「いくら名目があるとは言え、あまり派手 に出発するわけにもいかないだろう。敵国 にも知られてしまうし。だから、つく護衛 は3~4人ほどだ。それに世話係の使用人 が1人」
レオドルはそんな彼を呆れた顔で見ている 。その目は、『だからまだ決まったわけで はないだろう』と語っている。
しかし、彼女は詳しく聞いておきたかった 。その上で判断したいのである。
「ルートは山道や田舎を通る。その方が狙 われる可能性が少ない」
「誰に狙われると言うのでしょう?」
彼女が質問すると父親ははっと口をつぐん だが、代わりにレオドルが答えた。
「反国王派や敵国に誘拐され、それを理由 に国を脅迫するという可能性、跡取り争い の貴族の奇襲、他にも可能性はまだまだあ る」
リリアスは静かな顔でそれを聞いている。
「もちろん、推薦する騎士はこちらが責任 をもって力を保証しよう」
彼は、それを言うときだけ少し誇らしげに なった。
一方、皇王は『あの話題』を口にした気ま ずさで黙っている。それに代わるように、 レオドルが話し出した。
「馬車は使わないつもりだ。だが、馬なら 騎士と使用人一人に一頭ずつ与えよう。姫 は乗馬できるか?出来るならばもう一頭つ けるつもりだ」
「乗馬は……やってみたことありません」
俯きがちにリリアスは答えた。
「そうか……。ふむ、ではそれはまた考え よう。さて、プラニアスに着くのが早くて 一月後、侯爵の用意した館につくのがその さらに半月後の予定だ」
それはつまり一月半かかると言うことだ。 そこまで長い間を要するのは、それだけこ の国が広いからである。
「しかしそれはあくまで順調に行った場合 。アクシデントがあれば、最終目的地につ くのは三月後にもなるし、もっと遅くもな るだろう」
─43─