あなたが教えてくれた世界
(三月後……)
そこまで長い期間野外で生活すると言うの は、彼女には皆目見当もつかなかった。
「確かに無茶苦茶だし、危険も多いが、な かなか良い作戦だと私は思う。どうだ姫、 受けるか?」
突然選択を迫られ、リリアスは焦った。ま だ決められていないのだ。
それでもずっと思っていた事があったのだ が、突然それが口をついて出てきた。
「……あの、そのように、私だけ逃げると 言うのは、少し卑怯なのではないでしょう か……」
レオドルは意外そうな顔をした。
「そう思うのか?それでは、和平に王女を 差し出せと言う貴族の一派は、卑怯だとは 思わないのかね?」
そんな答えが帰ってくるとは思わず、リリ アスはぐっと詰まってしまった。
「そうかもしれません……。でも、お父様 や他の皆様が努力なさってるのに、私だけ のうのうと逃げ隠れしているなんて我慢が なりません」
「ほう……」
彼がそんな声を出すので、てっきり説得出 来たかと思うリリアスだったが、あろう事 か彼は感心しているのだった。
「なるほど……確かに、頑固な所は父親に も母親にも似ているな……」
そう呟いた後、レオドルは満足げにリリア スに言った。
「ますますやる気になった。もう一度よく 見直して、快適な旅になるよう尽力するよ 」
先ほどの主張が殆ど無視されているの事に 彼女はむっとした。
「待って下さい。私、まだ計画に賛成する とは言ってません」
いつになく固い声でそう反論する。
それに答えたのはセントハーヴェス侯爵だ った。
「おや、私の記憶違いなのかな?姫はさっ き、父に命令されたら迷わず従うと言うよ うな事を言っていた気がするのだが……」
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