エリート外科医の甘い独占愛

「野島さん」

長い廊下の少し先に、まるで待ち構えていたかのように立っていた伊崎先生。

私は会釈だけすると、そのまま通り過ぎようとした。

「待って下さい、野島さん」

そういって伊崎先生は、私の目の前に立ちはだかる。

「なんですか、伊崎先生」

「ねえ、野島さん。辞めたりしませんよね?僕考えたんです。僕が野島さんと付き合ってたってことにできないかな?ほら、僕は広岡先生に似ているし、あの写真に写っていたのは実は僕だって言うんです。そうしたら誰も責めたりなんて――」

私は何も言わずに伊崎先生の背中に両手を回した。

それから少しだけ背伸びをして、伊崎先生頬に軽く口づける。

「の……じまさん!?」

「今まで、ありがとうございました。私、先生の事を、好きになればよかったのかな」

そうしたら、この間違いだらけの愛を、もっと早く終わらせることが出来たのかもしれない。

ううん、ちがう。

罪から逃げるために、彼を利用しなくてよかったんだ。

だから、

「さよなら、伊崎先生」

スルリと腕を解くと、伊崎先生に背を向けて走り出した。


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