みだりな逢瀬-それぞれの刹那-


ちなみに陽香は保険会社で営業事務を、ほのかは地銀の経理部で働いている。


女性比率の高い職場ゆえか、就職してからの彼女たちは一歩引いて物事を見る節がある。


「杏奈ちゃん、鶏の唐揚げもおいしいよ?」

「ありがとー。全部食べるー」

「じゃあ追加しよっか」

こうなったらもう、真ん中に座るマイペースな亜矢が唯一の癒しなのは明白だ。


そんな彼女はメンバー内ただひとりの既婚者。だから私がプロポーズしても遅い。もちろん冗談だけど。


さらに結婚一年目の新婚さんで職業は保育士、という彼女に最善で順当な毎日を送っている。



「ていうか、アンタ呑気に食べてるけど。ちゃんと仕事のトラブル解消してきたの?」

亜矢のお給仕に甘えていると、陽香が軟骨の唐揚げを咀嚼しながら尋ねてきた。


「その顔やめな」

「祥子も彼氏の文句言う時、こんな顔だよ」

つっけんどんに言えば、亜矢の隣の席から冷笑が返ってきた。うわー、無言の圧力ってやだー。



「また“例の人”?」

「ああ、上司さんね」

私が何かを言う前に、向かいの陽香とほのかは顔を見合せながら勝手に納得していた。



そしてふたり揃ってこちらに視線を向けると祥子も加わり、ほぼ同時に口を開く。


「――大人になんなさい」」と。


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