みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
「ところで」
沈黙にも慣れた頃、不意に最奥のデスクから届いた声。
また嫌味の往来ですかと言わんばかりに、「何か?」とつっけんどんに返す。
「間宮は元気か?」
「……何でアンタが聞くの?」
訝しげな顔をそのまま向ければ、珍しく作業する手を止めてこちらを窺う男と目が合う。
「オマエなら知ってるだろ?」
さらに当然と言わんばかりの疑問符も加わり、ミントタブレットの癒し効果は速攻で消え失せた。
「へー、間宮さんが好きなんだ。やっぱりね」
「はぁ?」と小馬鹿にしたような態度にまた苛立つ。上司だろうが何だろうが関係ないと、感情任せにキッと睨みつけた。
「そんなに知りたいなら教えてあげる。
間宮さんから退職直後にお礼の電話が一度あった以降、一切連絡取ってないわ。それが何か?」
ちなみに間宮さんとは、半年前に当社を退職した後輩だった子のこと。
メガネとフルアップの外見に無表情の才媛がお固い印象を与えるけど。
その大人びた彼女がごくたまに笑えば可愛らしく、同性から見てもそのギャップは羨ましかった。