みだりな逢瀬-それぞれの刹那-
この若さで何で?家族歴って何?遺伝から癌を引き寄せたの?それとも……。
PCを操作して病状を伝え、患者の私を気遣う医師はまさにプロ。そんなことも頭の片隅で考えていたけれど。
ここで手術しましょう、と彼が言ってくれたらふたつ返事で頷いた。
僅かな可能性にも賭けたいと思うほど、私だってこの人生をいま終えるのは惜しいのが本音。
病を患った事実を不幸の連続とは言わない。私よりももっと苦しんでいる人はこの世にいるから。
ただ、“あの時、ああしておけば良かった”とか色んなことが脳裏を過ぎっている。本当に人間とは贅沢な生き物かもしれない。
誰だってこの世に生を受けた時から、人生終末へ向けてのタイマーは動き出す。
でも、こんなに早く訪れるとは思わなかった。……せめて彼が日本に帰って来るまで、どうして待ってくれなかったの?と。